日本毒性学会学術年会
第47回日本毒性学会学術年会
セッションID: S6-1
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シンポジウム6
計算毒性学に基づくin silico毒性予測の現状と課題
*植沢 芳広
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抄録

コンピューターを用いた計算により様々な毒性学的課題を解決に導く学術領域を計算毒性学(Computational Toxicology)という。化学物質によって生じる種々の毒性を、動物実験等に頼ることなく予測することが計算毒性学における主要なテーマのひとつである。環境中の化学物質の網羅的な安全性管理は世界的な潮流であるが、化学物質の種類は膨大であることから実験的な毒性評価に伴う時間的・経済的制約及び動物実験倫理上の問題によりその達成は困難である。これは、化学品のみならず医薬品、農薬、化粧品といった化学物質を取り扱う分野に共通した課題である。そこで、現在までに蓄積されてきた実験結果を活用して、まだ実験結果が得られていない新規化合物の毒性をin silico実験系によって予測する試みが進行している。この技術を利用することによって、化学構造さえ分れば環境中の物質や新規なプロダクトを得るために考慮すべき多数の候補化合物から毒性物質を識別する超ハイスループット予測システムを構築し得る。しかし、精度の高いin silico予測モデルの構築には次のようないくつかの問題点がある。(1)発現機序が不明である。(2)化学構造と毒性の間の関係が複雑である。(3)まとまった毒性測定値が得られない。特にヒトに対する毒性データはほぼ存在しないに等しい。本講演では、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)における「創薬支援インフォマティクスシステム構築プロジェクト」の成果物として、上記の問題点を考慮した医薬品肝毒性・肺毒性予測システムを紹介する。さらに、化学品を対象とした経済産業省事業である「毒性関連ビッグデータを用いた人工知能による次世代型安全性予測手法開発プロジェクト(AI-SHIPSプロジェクト)」における計算毒性学的アプローチについて紹介する。

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