主催: 日本毒性学会
会議名: 第47回日本毒性学会学術年会
開催日: 2020 -
100 nm以下に制御されたナノ粒子(NP)は、組織浸潤性などに優れていることから、医薬品や食品、化粧品など、様々な製品に適用されている。その一方で、NPは、従来の素材とは異なる体内動態などを示すことから、未知の生体影響を誘発しうることが懸念されている。そのうえ、NPの安全性は、構造式と量に加え、質(形態、表面性状、サイズなど)にも影響されるため、従前の化学物質(分子状)とは異なった観点からも解析することで、そのリスクを総合的に理解することが求められている。本観点から、NPのハザード同定については、多方面から進められつつあるものの、曝露実態やその後の動態解析については十分になされていないのが現状である。特に、最近では、金属NPがイオン化するのみならず、イオンから粒子が再形成されることが報告されつつある。さらに、粒子径や粒子/イオンの違いといった存在様式の変化が、生体応答の強弱などに関わることをこれまでに明らかにしており、「何が、どこに、どれだけ存在しているのか」を理解することが重要である。しかし、これまでのNPの曝露実態や動態の解析手法では、生体内でのNPの存在量と存在様式を同時解析できず、新たな技術基盤の開発が求められていた。その点、我々はこれまでに、生体試料の前処理法を最適化することで、生体内でのNPの存在量と存在様式を解析可能な手法(生体試料応用型1粒子ICP-MS)を開発してきた。
そこで本シンポジウムでは、開発に至った経緯と手法の有用性を紹介させていただき、医薬品・食品・化粧品のヒトでの安全性確保に向けた議論をさせていただきたい。