日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-37
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口演
発達神経毒性ポテンシャルのスクリーニングとしての短期in vivo甲状腺ホルモン影響評価法の開発:propylthiouracilおよびphenobarbitalの影響検出評価 II. 母動物と哺育児に対する影響
*佐藤 旭須藤 英典緒方 敬子南 健太小坂 忠司北條 仁高橋 尚史冨山 成人岩下 勝将青山 博昭山田 智也
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抄録

【目的】

甲状腺ホルモン(TH)は脳発達に必須と言われており、母親の血中THが過度に低下した際に児に脳発達障害が起きることがヒトや実験動物で報告されている。一方、肝酵素誘導の二次的影響として血中THを軽度に低下させる化学物質が散見されるが、これらの児脳発達への影響は明らかでない。そこで、脳発達障害の前段で生じる脳中THへの影響を調べる簡便なスクリーニング試験の開発が望まれる。我々は、米国環境保護庁が提唱する母ラットと児ラットの血中TH濃度比較試験Comparative Thyroid Assayを用い、児の脳のTH濃度や病理組織を追加観察する試験系の検証に着手した。今回、TH合成阻害剤propylthiouracil(PTU, 10 ppm)および肝代謝酵素を誘導するphenobarbital(PB, 1000 ppm)を一群当たり17匹のCrl:CD(SD)ラットの雌に妊娠6日から哺育21日まで混餌投与し(哺育13日以降PTU、PBともに飼料中濃度を半減)、哺育21日に母動物と児動物を解剖して、TH濃度を含む各種影響の有無を調べた。

【結果および考察】

PTU群では、概して母動物と児動物ともに血中THが有意に低下した。児の脳中TH低下、大脳のHeterotopia発現、配置異常、小脳の外顆粒層の程度・頻度の増加がみられた。PB群では、母動物で期待した肝臓影響(重量増加、肝細胞肥大、UDPGT活性誘導)がみられ、それに起因して血中THは軽微ながら有意に低下した。一方、児動物では、肝Ugt mRNAが軽微に増加したが、概して血中・脳中THに一貫した明らかな低下はみられなかった。児動物の小脳で外顆粒層を有する個体頻度が増加したが、大脳では異常はなかった。以上、本試験系において概して期待された影響が検出されたが、PBに関しては今後再現性やより高用量の影響を確認する。

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