日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-4
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カーボンナノチューブによる毒性発現機構
*山口 慎一朗守田 匡伸伊藤 文哉謝 祺琳豊國 伸哉中山 勝文
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抄録

カーボンナノチューブ(CNTs)は次世代ナノ材料として期待されているものの、その毒性の懸念から国際化学物質事務局ChemSecがCNTsをSIN (Substitute It Now)リストに加えたため、今後のCNTsの使用継続について国際的に大きく議論されている。多層CNTs(MWCNTs)は生体内に入ると主にマクロファージに取り込まれ、そのマクロファージ細胞死およびNLRP3インフラマソーム活性化によるIL-1β分泌が毒性発現に関与すると考えられているが、マクロファージがどのように細胞表面上でMWCNTsを認識するのかはよく分かっていない。本研究で我々は貪食受容体スクリーニングによりT cell immunoglobulin mucin 4(Tim4)およびTim1がMWCNTsを認識することを見出した。CRISPR/Cas9システムによって作製したTim4-/- Tim1-/- マウスやTim4-/- マウス由来腹腔マクロファージを用いた解析から、Tim4はマクロファージによるMWCNTsの貪食、およびその結果起きるIL-1β分泌に関与することが判明した。さらにTim4-/- マウス、あるいは抗Tim4モノクローナル抗体を全投与した野生型マウスにおいて、MWCNTs腹腔投与による横隔膜中皮細胞層の肉芽種形成が有意に抑制されていたことから、Tim4はMWCNTs曝露によるin vivo炎症応答に関与することが示唆された。一方、Tim1はヒト肺細胞株によるMWCNTsの認識に関与することが判明した。以上の結果は、Tim4およびTim1はMWCNTs受容体として機能することを示す。

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