日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-41
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口演
バルプロ酸の胎児期曝露が誘発するミクログリアの異常が大脳皮質の発生・発達に及ぼす影響
*駒田 致和松井 拓磨長尾 哲二
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抄録

抗てんかん薬であるバルプロ酸(VPA)は、胎児期の曝露によって神経管閉鎖異常などの催奇形性と発達障害である自閉症を発症するリスクが報告されている。そこで本研究では、胎児期のVPA曝露モデルマウスを作成し、大脳皮質の形成形成期における細胞増殖や神経新生における影響を組織学的に解析する。さらに、高次脳機能の発達への影響を、活動量や社会的行動に着目した行動解析によって評価する。発表者らはこれまでに、胎児期のストレスや感染症、化学物質曝露によるミクログリアの異常な活性化を伴う脳内炎症が、大脳皮質の組織構築に影響を及ぼす可能性を示してきた。本研究加太においても、バルプロ酸の胎児期曝露による大脳皮質の形態形成および機能発達への影響の原因の一つとして、ミクログリアの機能異常に着目して解析を行った。

妊娠12日目のICRマウスにVPAを400 mg/kg体重で皮下投与した。組織学的解析によって、胎齢15日の胎児を用いて、免疫組織学的解析によって神経新生や細胞増殖、さらにはミクログリアの数や形態についての解析を行った。また、神経新生に関連する因子や、ミクログリアの活性化、脳内炎症に関連する因子について遺伝子発現解析を行った。並行して、高次脳機能の発達については、Open Field testやSocial interaction testなどの行動解析を用いて活動量や社会的相互作用についての解析を行った。

VPA群において、神経幹細胞の細胞増殖の促進と、ミクログリアの異常な活性化が観察された。また、行動解析では発達段階依存的な活動量の亢進が観察された。成熟後には、ホームケージでの活動量の亢進や社会的行動の異常が検出された。以上のことから、バルプロ酸の胎児期曝露は、ミクログリアの活性の異常を誘発することで神経幹細胞の細胞増殖を誘発する可能性を示した。また、これらの組織構築の異常は、活動量や社会的行動などの高次脳機能の発達に影響する可能性を示した。

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