日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-123
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ポスターセッション
繊維型大麻草主成分カンナビジオール酸によるPPARβ/δを介したCOX-2の発現抑制
*平尾 雅代古賀 貴之境 絃樹瀧口 益史戸田 晶久杉原 成美竹田 修三
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抄録

【目的】一般に、がん細胞では増強したcyclooxygenase-2 (COX-2)シグナルを介してmigrationが亢進しているため、COX-2シグナルの抑制はがん細胞のmigrationの抑制を可能とする。我々はこれまでに、繊維型大麻草主成分カンナビジオール酸(CBDA)がCOX-2の酵素活性と発現の両方を抑制し、高転移性ヒト乳がんMDA-MB-231細胞のmigration能を低下させることを明らかにしている(Drug Meatb. Dispos., 2008; Toxicol. Lett., 2012; J. Toxicol. Sci., 2014; J. Nat. Med., 2017; Nat. Prod. Commun., 2017; J. Toxicol. Sci., 2020)。しかし、CBDAによるCOX-2の発現抑制機構の詳細については未だ不明である。本研究では、COX-2の発現調節におけるperoxisome proliferator-activated receptor (PPAR) β/δの関与に着目し、CBDAによるCOX-2の発現抑制機構の解明を目指した。

【方法】COX-2およびPPARβ/δを発現する乳がんMDA-MB-231細胞を用いた。COX-2の遺伝子発現量およびPPARβ/δの転写活性はリアルタイムPCR およびPPAR応答配列の活性化を指標としたルシフェラーゼアッセイを用いてそれぞれ解析した。

【結果および考察】MDA-MB-231細胞では、PPARβ/δの発現プラスミドの導入によりCOX-2の発現が増加した。また、PPARβ/δのアゴニストGW501516は COX-2発現を増加させ、PPARβ/δのアンタゴニストGSK0660はCOX-2発現を低下させた。これらのことから、MDA-MB-231細胞ではCOX-2の発現がPPARβ/δにより正に調節されていることが示唆された。MDA-MB-231細胞の増殖に影響を与えない5 μMのCBDAはCOX-2の発現を抑制した。CBDAはGW501516誘導性のPPARβ/δを介した転写活性およびCOX-2の発現を抑制した。また、CBDAとGSK0660の共処理はGSK0660単独処理よりもCOX-2の発現を有意に低下させた。以上より、MDA-MB-231細胞ではCOX-2の発現がPPARβ/δにより正に調節されており、CBDAはPPARβ/δの抑制を介してCOX-2の発現を抑制することが明らかとなった。

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