日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-51S
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ポスターセッション
非アルコール性脂肪性肝疾患関連初期発がんモデルの肝前がん病変におけるERファジーの解析
*魚本 涼加清水 紗織武居 圭祐前田 夏乃小林 美央大島 可南美原 絵美香曾 雯渋谷 淳吉田 敏則
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抄録

【背景・目的】非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、非アルコール性脂肪性肝炎から肝硬変を経て、肝がんに進行するリスクを有する。NAFLDの発生にはオートファジーによる恒常性維持の破綻が関与する。本研究では、脂肪肝関連初期発がんモデルラットに肝酵素誘導剤を介して小胞体の選択的オートファジー(ERファジー)を誘発し、肝前がん病変におけるERファジーの役割について検討した。

【方法】雄性F344ラットを用い、前がん病変観察のため8週間肝中期発がん試験を実施した。基礎飼料(CD群)または高脂肪飼料(HFD群)を給餌し、両群の一部には肝酵素誘導のためにフェノバルビタール(PB)を6週間飲水投与した(CD+PB群、HFD+PB群)。

【結果・考察】HFD群では、CD群に比較し、体重が増加したが、両群におけるPB投与の影響はなかった。肝臓重量は、CD群、HFD群ともにPB投与により増加した。一晩絶食後の採血による血液生化学検査では、各群において高脂血症および肝傷害マーカーの異常は認められなかった。肝臓の病理組織学的検査では、NAFLD activity score(NAS)および脂肪化スコアが、CD群に比較し、HFD群で増加し、HFD+PB投与群で脂肪化スコアはさらに増加した。肝前がん病変指標のGST-P陽性巣は、HFD給餌、PB処置により増加し、HFD+PB群では抑制された。オートファゴゾーム指標LC3Bは各群の前がん病変で発現していた。前がん病変におけるERファジーレセプターFAM134Bは、CD+PB群では不均一に発現し、HFD群では比較的均一に発現亢進がみられ、HFD+PB群で抑制された。

【結論】以上の結果より、HFD給餌あるいはPB投与による肝前がん病変の増加にはLC3BおよびFAM134Bの発現で示されるようにERファジーの抑制が関与し、両処置による前がん病変の抑制にはERファジーの促進の関与が示唆された。HFD給餌とPB投与により前がん病変周囲の肝細胞脂肪化は顕著になったことから、肝前がん病変の内外でオートファジーの状態に明らかな違いがあることが示唆された。

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