日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-52S
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ポスターセッション
ラットのCDAA食誘発性NASH様病態に於ける短期餌切り替え試験の解析
*当摩 茉莉花美谷島 克宏宇野 絹子上地 哲平煙山 紀子中江 大
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抄録

【背景】

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の発症・進展に至る機序は未だ明らかではなく、根治的な治療法も確立されていない。

ラットのコリン欠乏メチオニン低減アミノ酸(CDAA)食モデルは、NASH研究に用いられる食餌誘発性動物モデルの1つであり、顕著な脂肪肝や炎症及び線維化を示すモデルであるが、誘発された病変に対して餌を通常食に切り替えることによるNASH病態の可逆性を検討した知見は少ない。

【目的】

本実験では、短期間のCDAA食給餌から通常食へ切り替えることによるNASH病態の早期段階からの可逆的ないし非可逆的な変化を観察することで、早期よりNASHの進行に関わる因子を見出すことを目的とした。

【材料及び方法】

6週齢雄性F344系ラットにCDAA食または通常食(SD)を1ないし2週間与えた。餌切り替え群では、CDAA食を1週間給餌後、SDに切り替え1週間給餌した。給餌期間後に解剖し、血液生化学的検査、肝臓の病理組織学的観察及び遺伝子発現解析を行った。

【結果】

血液生化学検査では、血中AST活性は2wCDAA群で上昇、ALT活性は上昇傾向を示したが、餌切り替え群では低下した。病理組織学的観察では、1及び2wCDAA給餌で肝細胞の脂肪化が増強したが、餌切り替え群においても脂肪化は中等度に残存した。遺伝子発現解析では、1ないし2wCDAA給餌で炎症、線維化及びオートファジーに関わる遺伝子の発現が変動した。餌切り替え群では、多くの遺伝子発現が低下したもののFasリガンド関連遺伝子の発現は依然として高かった。

【考察】

CDAA食の2週間給餌により発現した変化は、餌を切り替えたことでその多くが減弱したが、一部の遺伝子発現は必ずしも減弱しなかった。本結果を、先行研究で得られたNGS解析の結果と照らし合わせることにより、早期からNASH病態進行に関与する標的因子の特定に繋がるものと考えられた。

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