日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-54S
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ポスターセッション
抗菌薬による肝障害発症における胆汁酸組成変化の影響
*木下 裕介早崎 洸太郎竹村 晃典伊藤 晃成
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抄録

【背景・目的】

抗菌薬は薬物性肝障害の発症頻度が高く、その発症メカニズム及び肝障害リスクを同定することは重要な課題である。そこで、抗菌薬が共通の肝障害リスク因子を持つと仮定し、その因子として胆汁酸組成変化に着目した。胆汁酸は一定の組成で体内を循環しているが、抗菌薬による腸内細菌叢の変動は胆汁酸組成を変化させ、抱合型の1次胆汁酸の量が上昇することが示されている。抱合型の1次胆汁酸は水溶性が高く毒性発現への寄与は低いと考えられているが、近年ではそのような胆汁酸が炎症反応を惹起させることが報告された。そこで本研究では、重篤な肝障害が原因で市場撤退したβ-ラクタム系抗菌薬であるフルクロキサシリン(FLUX)を代表薬とし、肝障害モデルマウスの作出ならびに肝障害発症における胆汁酸組成変化の影響を検討した。

【方法】

C57BL/6J マウス (メス、9週齢)を次の4群[i) vehicle、ii) FLUX: 100 mg/kg、iii) コール酸(CA: 450 mg/kg)、iv) FLUX+CA]に分けて、強制経口投与を1日1回、計14日間行った。経日的に採血し、肝障害マーカーとして血漿中ALT値を測定した。さらに実験最終日の抹消血中の各種胆汁酸量をLC-MS/MSにて定量した。また初代マウス肝細胞にFLUXや胆汁酸を曝露し、直接的な毒性発現ならびにmRNA levelを評価した。

【結果・考察】

7日目にCA群、CA+FLUX群で100 U/Lを超える血漿中ALT値の上昇が認められた。10日目以降、CA群は40 U/L未満にまで減少した一方で、CA+FLUX群では継続的に増加し続け、14日目には180 U/Lまで増加していた。末梢血中の胆汁酸では、CAの抱合体であるタウロコール酸 (TCA) が顕著に変動しており、vehicle群、FLUX群では15 μM未満であった一方で、CA+FLUX群で130 μMを超えていた。さらに初代マウス肝細胞にFLUXとTCAを共曝露した際に直接的な細胞毒性は認められなかったものの、ケモカインの遺伝子発現量が上昇した。

【結論】

抗菌薬による胆汁酸組成変化は、炎症反応を介した肝障害のリスク因子になることが示唆された。

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