【目的】肥満2型糖尿病モデルであるdb/db及びKK-Ayマウスの肝臓において高脂肪食給餌による影響を検討した。
【材料・方法】5週齢の雌性db/db及びKK-Ayマウス、対照群としてC57BL/6JマウスにCE-2(BD:基礎食)、Quick Fat (QF:高脂肪食)及びWestern Diet(WD:QF+コレステロール2%添加)を8週間自由給餌させた。飼育期間終了後に採血し、剖検並びに諸臓器を採取し、各種解析を実施した。
【結果】いずれの系統もQF及びWDで、体重増加傾向を示した。摂餌量は、両病態群で高値を示し、db/dbのQFではBDやWDに比較し高かった。肝重量は、両病態群で高く、特にWDで高値を示した。血液生化学検査では、両病態群でALT及びAST活性が高値を示し、db/dbでより高かった。血糖値も両病態群で高いが、餌による影響はなかった。インスリン濃度は対照群とdb/dbが同程度であり、KK-Ayで高値を示したが、その内QF及びWDではやや低かった。TC濃度はいずれの系統も高脂肪食群で高く、WDでより高かった。TG濃度はdb/dbで高脂肪食による低下傾向を示し、KK-AyではQFで高値を示した。病理組織学解析では、両病態群でQF及びWDによる肝細胞の脂肪化が認められ、WDでより顕著に進行していた。両病態群ともWDで軽度の線維化が観察され、その程度はKK-Ayに対し、db/dbでより顕著であった。肝臓の遺伝子発現解析では、解糖系に関連するGlucokinaseがいずれの系統も、BDに対しWDで発現上昇傾向を示したが、両病態群でQFによる発現上昇は見られなかった。炎症系関連及び線維化関連遺伝子は、いずれの系統も高脂肪食により高値を示し、その程度はWDで顕著であった。
【考察】両病態群においてWDによる解糖系の亢進に伴い、肝細胞脂肪化の進行及び肝細胞障害との関係が示唆された。