日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-8
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ポスターセッション
血管平滑筋細胞及びマクロファージ様細胞における亜ヒ酸による組織因子の発現誘導機構
*中野 毅荒木 祐美高橋 勉山本 千夏鍜冶 利幸藤原 泰之
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抄録

【目的】慢性ヒ素曝露により、動脈硬化症などの血管病変発症リスクが増加することが知られているが、その発症機構には不明な点が多く残されている。動脈硬化症の発生要因の一つとして、血液凝固・線溶系の破綻があげられる。これまでに我々は、亜ヒ酸が転写因子Nrf2の活性化を介して、組織型プラスミノーゲンアクチベーターの発現を選択的に阻害する結果、血管内皮細胞の線溶活性を低下させることを報告している。本研究では、血管平滑筋細胞及びマクロファージ様細胞が産生する凝固開始因子である組織因子(tissue factor: TF)の発現に与える亜ヒ酸の影響とその作用機構を検討し、ヒ素が血液凝固系に与える影響の一端を明らかとすることを目的とした。

【方法】ヒト大動脈由来血管平滑筋細胞及びヒト単球系THP-1細胞から分化誘導したマクロファージ様細胞を亜ヒ酸あるいはNrf2活性化剤であるスルフォラファンで処理した。TFのタンパク質量はウエスタンブロット法で、遺伝子発現量はリアルタイムPCR法で測定した。また、リポフェクション法でsiRNAを導入し、Nrf2ノックダウン血管平滑筋細胞及びマクロファージ様細胞を作成し、各実験に供した。

【結果・考察】亜ヒ酸は、血管平滑筋細胞及びマクロファージ様細胞のTFのmRNA発現量並びにタンパク質発現量を共に増加させることが確認された。また、Nrf2経路を活性化させるスルフォラファンで両細胞を処理してもTFの発現増加が亜ヒ酸と同様に引き起こされた。さらに、両細胞で確認された亜ヒ酸によるTFの発現増加作用は、Nrf2のノックダウンによって消失した。これらの結果から、亜ヒ酸は、血管平滑筋細胞とマクロファージ様細胞において、Nrf2経路の活性化を介したTFの発現増加を引き起こすことが示された。したがって、亜ヒ酸はTFの発現増加を介して血液凝固促進性を増強する可能性が考えられる。

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