日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: S24-1
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シンポジウム24
miRNAによる遺伝子発現制御機構を利用した次世代アデノウイルスベクターの開発と肝障害誘導機構の解明
*櫻井 文教水口 裕之
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抄録

アデノウイルス(Ad)ベクターは、遺伝子導入ベクターとして優れた特性を有しており、遺伝子治療用ベクターやワクチンベクターとしてのみならず、基礎研究における遺伝子導入ツールとしても汎用されている。Adベクターは、生体に全身投与した場合、投与量の90%以上が肝臓に集積し、肝障害を誘導することが問題となっている。Adベクターは、ウイルス遺伝子の発現に必須のE1遺伝子を遺伝子工学的に取り除くことによって、理論上、ウイルス遺伝子の発現が起こらないようになっている。しかしながら、わずかながらウイルス遺伝子の発現が起こることによってウイルスタンパク質に対する免疫応答、またウイルスタンパク質そのものによる細胞傷害が誘導されることで肝障害が起こる。一方で近年、長さ約20塩基の非コードRNAであるmicroRNA (miRNA)に大きな注目が集まっている。miRNAは、標的mRNAの3’非翻訳領域に存在する標的配列(部分的相補配列)に結合することで、遺伝子発現を抑制する。我々は、このmiRNAによる遺伝子発現抑制機構を利用することで、肝臓におけるウイルス遺伝子の発現を抑制できるのではないかと考えた。そこで遺伝子工学的手法により、Adベクターゲノム上の各ウイルス遺伝子(E2A、pIX、E4遺伝子)の3’非翻訳領域に、肝臓特異的miRNAであるmiR-122aの標的配列(完全相補配列)4コピーを挿入した。作製した各Adベクターをマウスに静脈内投与したところ、E4遺伝子の3’非翻訳領域にmiR-122a標的配列を挿入したAdベクターにおいて肝障害が大きく軽減した。また、本Adベクターを投与したマウスでは約1年にわたり、高効率な遺伝子発現が得られた。さらに、本Adベクターを用いることで、Adベクターによる投与後初期の肝障害誘導機構の解明にも成功した。本講演ではそれらについても紹介したい。

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