日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: S28-1
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シンポジウム28
吸入剤におけるイノベーション:遺伝子吸入粉末剤への展開
*岡本 浩一奥田 知将
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抄録

吸入剤は主に気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患など、肺局所疾患の治療に用いられている。吸入剤には、ネブライザーを用いる吸入液剤、スプレー型の吸入エアゾール剤、粉末を患者の吸気で分散する吸入粉末剤がある。この中で吸入粉末剤は、環境にやさしく、吸入の失敗が少ないことから、使用が増えている。粉末微粒子を肺深部に送達するためには、その空気力学的粒子径を0.5~3μm程度の大きさに制御する必要がある。しかし、微細な微粒子は付着凝集性が高く分散しにくいため、微細な薬物粒子を顆粒にする造粒法と、薬物粒子を粗大乳糖粒子の表面に付着させるキャリア法が多用されている。第3の方法として注目されているのが多孔性微粒子である。比重を小さくすることで、空気力学的粒子径が小さくても幾何学的粒子径を大きくできる。試料溶液を液体窒素中に噴霧して得られる微細な氷滴を凍結乾燥する噴霧急速凍結乾燥(SFD)法は、多孔性微粒子の調製法として優れている。多孔性微粒子は吸湿しやすいという課題があるが、疎水性アミノ酸を添加することで耐吸湿性と分散性が改善できた。遺伝子を主薬とした吸入剤によりに、肺局所疾患の遺伝子治療が期待できる。遺伝子の安定性や細胞導入効率を改善するために一般にウイルス性もしくは非ウイルス性ベクターが添加されるが、安全性や細胞内での核酸とベクターの解離性の問題がある。当研究室では、低分子量ヒアルロン酸(LHA)を賦形剤としたベクターを含まないプラスミドDNA単独(naked pDNA)のSFD製剤が、ベクターを含むpDNA製剤よりも高い遺伝子発現効果を示すという、興味深い知見を得た。LHAの分子量及びLHAと疎水性アミノ酸の混合比を最適化することで、遺伝子発現並びに吸入特性を大きく改善できた。同じ組成の遺伝子溶液では,高い遺伝子発現は認められなかった。

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