日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: S28-4
会議情報

シンポジウム28
吸入による中毒:救急医療の現場からの報告
*廣瀬 保夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

 吸入による中毒は、ガス状の原因物質を経気道的に摂取することにより発症する。今回は、日常の救急医療の現場で遭遇する、吸入による中毒について自験例を中心に報告する。

 日常の救急診療において、最も多く遭遇するガス中毒は一酸化炭素中毒である。労働作業中、日常生活における事故のみならず、自殺行為など様々な場面で発生している。特に2005年頃にインターネットで練炭による自殺法が流布された際には、全国的に多発した。一酸化炭素中毒の治療は、高気圧酸素療法の適応、遅発性脳症の治療など、現在も臨床的な問題点の多い中毒である。

 2007年頃には硫化水素を発生させる方法がインターネットで流布され、中毒症例が多発した。化学テロなみの強い毒性を持つガスを発生させることが家庭用品で可能、という事実の社会的な影響は大きく、自殺症例、救助者の二次被害例などが多発し、社会問題となった。

 特殊な場合として、アジ化ナトリウム、石灰硫黄合剤、砒素などを経口摂取すると、胃酸と反応してガス状の毒性物質が発生することがある。患者が発生源として、救急現場で二次被害をもたらす可能性があり、治療上のピットフォールとなりうる。

その他、ヘリウムガスによる中毒、防水スプレーによる呼吸障害、ドライアイスによる二酸化炭素中毒、シンナーやLPガス吸入による中毒症例などを呈示する。

著者関連情報
© 2021 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top