日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: S4-2
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シンポジウム4
プラスチック添加剤・ベンゾトリアゾール系UV吸収剤によるAhR活性化を介した免疫毒性作用
*小島 弘幸窪田 篤人寺崎 将室本 竜太高田 秀重
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抄録

 近年、海洋プラスチック汚染が深刻化している。プラスチックには様々な添加剤が含まれており、光安定剤としてベンゾトリアゾール系UV吸収剤(BUVSs)が広く使用されている。しかしながら、これらの化合物に関する毒性学的作用については不明な点が多い。今回我々は、13種類のBUVSsについて受容体型転写因子であるアリルハイドロカーボン受容体(AhR)に対する作用を明らかにし、それらの免疫系に及ぼす影響を調べたので報告する。

 高感度レポーター細胞株DR-EcoScreenを用いたルシフェラーゼアッセイの結果、UV-P、UV-PS、UV-9及びUV-090の4物質に用量依存的なAhRアゴニスト活性を見出した。特にUV-PSは、他の3物質に比べ10倍程度の強い活性を示した。AhRリガンド結合部位とBUVSsとの分子ドッキングシミュレーションによるin silico 解析では、これらの物質の中でUV-PSが最も強いAhRとの結合親和性が示された。AhRアゴニスト活性を示したUV-P及びUV-PSをC57BL/6N雄性マウスに3日間経口投与し、脾臓中のCD4陽性細胞におけるTh1、Th2、Th17、Tregの存在比率をフローサイトメトリー法により測定した。その結果、UV-P及びUV-PSは有意にTregを誘導し、その誘導作用は UV-PS >UV-P であった。さらに、マウス脾細胞を用いたin vitro 試験では、UV-PS曝露がUV-P曝露に比べて低濃度でTregを誘導することが認められた。以上の結果より、プラスチック添加剤であるBUVSsのいくつかは、AhR活性化を介してTreg誘導を惹起し、免疫系に対して抑制的に作用することが示唆された。

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