スプライシング変異は遺伝性疾患関連変異として報告されている既知遺伝病関連変異(約27万種類)のおよそ9%を占めるが、中でも深部イントロン変異に起因する偽エクソン型スプライシング変異が新たな制御形態として注目されている。これら深部イントロン変異は、変異によりイントロン配列内にスプライス部位やエンハンサー等を新生させることでイントロン配列の部分的なエクソン化、すなわち「偽エクソン」を生じさせ、特定の遺伝子にフレームシフトや停止コドンを導入することで病原性を示す。これまでに我々は、低分子化合物を処理することで偽エクソンを抑制する活性があることをNEMO異常症、嚢胞性線維症の既知偽エクソン変異モデルの解析から見出した。これら偽エクソン型の深部イントロン変異は原因変異未知症例、未診断疾患群の多くに潜在している可能性が指摘されるが、既存のエクソーム解析等では検出することが出来ないことから疾患関連性の知見が殆ど得られていない。しかしながら、東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)など疫学・病原性解析が可能な規模の全ゲノム配列情報リソースと、SpliceAIなど人工知能技術を活用して解析対象者を絞り込める可能性がある。さらにToMMoに保存されているドナー不死化細胞にスプライシング制御化合物を投与して応答性・有効性を検討することにより、遺伝性難病の個別化医療への道を拓ける可能性がある。