日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: W2-1
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ワークショップ2
抗酸化性食品成分によるタンパク質自然修飾を介した生体恒常性維持機
*板倉 正典内田 浩二
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抄録

我々は太古より現在まで、食品を摂取するという形で、外来異物に複合的に曝露されてきた。食品には老化や疾病に予防効果のあるビタミンやポリフェノール、脂質などの生体調節成分が含まれており、これらに日常的に曝されることで生体は恒常性を維持し環境に適応してきたと考えられる。食品成分の機能性発現機構として、食品成分自体の抗酸化性やリガンド活性などが報告されているものの、食品成分の体内動態(吸収・代謝など)を考えると他の作用メカニズムの存在が示唆される。一方で、食品成分は代謝などを介して様々な中間体を生成することが知られている。これらの中間体の多くは反応性が高く、生体分子を非酵素的に修飾(自然修飾)し、分子上に様々な修飾付加体(アダクト)を形成する。近年、酸化型カテキン(EGCG)や脂質由来アルデヒドなどの食品成分中間体によって修飾を受けたタンパク質が、他の生体分子(自然抗体やapoEタンパク質など)への結合能を獲得することが明らかとなり(Chikazawa et al. JBC, 2013; Hirose et al. JBC, 2019)、このような修飾タンパク質と生体分子の相互作用は、細胞内および細胞間シグナルに影響を与え、細胞機能調節や疾病の発症制御などの「食の機能性」に関与することが予想される。しかし、どのような食品成分がどのようなアダクト形成に寄与するのか、どのような生理活性を示すかなど、その分子メカニズムの大部分が未解明のままである。今回、ビタミンCやポリフェノール修飾タンパク質に着目した研究の中で明らかになってきた、ヒストンタンパク質への結合を介した抗炎症および細胞保護機構について報告するとともに、アダクト形成を介した食による生体恒常性維持機構について議論したい。

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