2020年1月に日本国内で初の新型コロナウイルス感染症が確認され、同年4月より最初の緊急事態宣言が発令された。この宣言以降、社会における働き方が大きく変化し、この急激な変化に適応しなければならない状況となっている。「New Normal」時代を迎えたことで、多くの企業が新しい働き方を取り入れており、製薬業界も例外ではない。医薬品開発における非臨床安全性試験を適切に実施するためには、GLP施設の維持管理及び適切なタイミングでのGLP試験の遂行が必要である。コロナ禍による環境変化に伴って、製薬企業やCROの現場にはどのような課題が浮上し、どのように品質を維持しながら試験を遂行しているのだろうか。その取り組みの共有は「New Normal」時代への適応、さらには医薬品開発の推進に繋がると考え、業界各社へのアンケートを行い、情報を収集した。
アンケートの回答は、国内の製薬企業及びCROの約30社から入手した。集計結果から、回答企業の約8割においてGLP試験の遂行にコロナ禍の影響があったことが明らかとなり、特に人との接触を伴う業務への対応がなされていた。非臨床安全性試験の多くは、様々な専門部署の担当者が連携し、比較的アナログで実施されるが、新型コロナウイルスへの感染対策として、三密の回避、リモート業務の活用など、これまでの業務体制から大きく変化していることがわかった。コロナ禍への対応により急速に体制を変更せざるを得ないという状況にあり、担当者の多くの苦労があったが、その一方で、慣習的に変更が難しかった作業や手順を見直す機会にもなり、合理化の検討が進められている様子がうかがえた。
本発表では、アンケート回答における各社の取り組みを紹介し、そこから見えた課題や今後に構築が望まれる仕組みについて展望を述べたい。