日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: W6-1
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ワークショップ6
ひとりのがんサバイバーとして
*乾 嘉孝
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抄録

1986年、米国のがん患者アドボカシー団体であるNational Coalition for Cancer Survivorshipの設立をきっかけに、がんサバイバーは「がんと診断されてから一生がんサバイバーであり、その家族らもサバイバーである」と定義され、後に「がんサバイバーとしてどう生きるのか、周囲や社会はそれをどう支えられるのか」というがんサバイバーシップの考え方に発展していった。私は2011年11月、46歳のときに急性前骨髄球性白血病(APL)と診断された。当時、治療プロトコルが既にあり、寛解導入療法としてAll-trans-Retinoic Acidの大量投与、次に地固め療法として化学療法を3回受けた結果、幸運にも分子学的寛解状態に達し、2012年6月、7ヵ月振りに復職することができた。化学療法では強い副作用に苦しんだが、これはある程度予期(覚悟)していたものであり、むしろ復職後に体調がすぐれず、不安感に苛まれることが度々あろうとは思いもよらずのことであった。そのような状況で参加した患者会で「寛解後10年経ちました」と同じAPL経験者の方の言葉に勇気づけられ、2015年、寛解3年後にようやく私自身が患者会で闘病体験を話せる側になった。聴講された方から「励みになりました」との言葉を頂けたことを契機にがんサバイバーになった意味を考え始めた。本発表では、APLという疾患の概要と私が経験した化学療法の副作用について、また復職後の気持ちのあり様の変遷と「がんサバイバーとしてどう生きるのか」について、ひとりのがんサバイバーの体験談として紹介します。

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