日本毒性学会学術年会
第48回日本毒性学会学術年会
セッションID: W5-5
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ワークショップ5
ヒトマイクロバイオーム研究に基づく創薬ビジネスの現状と展望
梶浦 貴之
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抄録

ヒトの健康や疾患との関わりが次々と明らかになっているマイクロバイオームは,現在,科学的のみならず,産業界からも大きな注目を浴びており,新たなイノベーション創出の源泉となることが期待されている.一方,日本人のマイクロバイオームは欧米人とは異なる特徴を有していることが明らかになっている点を踏まえると,日本人のデータを様々な健康医療情報と合わせて取得し,解析することが日本国内での産業応用には重要となる.それらを実現するための産業化の視点では,データの再現性など信頼できる基盤があることが大前提になる.そのためには産業化を見据えたプロトコルの標準化が極めて重要であり,そのためのバリデーションツールである標準物質の開発やバリデーションフローの整備が求められる.産業化に重要なプロトコルの標準化と日本人データの取得,そのリファレンスとして多くの産業における活用が期待できる健常人データベースの構築を目的に,2017年4月に産業による一般社団法人日本マイクロバイオームコンソーシアムが設立された.本講演では,コンソーシアムの設立の経緯や目的,目指す目標を紹介するともに企業間の協調的連携による活動内容や研究開発計画を紹介する.

さらに,医薬品への応用の視点から,創薬応用に向けた最近のトレンドについても紹介する.近年, 健常人糞便移植による治療効果が相次いで報告されるなど特に欧米では創薬への応用が活発化している. すでに欧米ではマイクロバイオームを手掛ける複数のベンチャー企業が設立され, 一部のベンチャー企業は大手の製薬企業との提携が発表されている.さらに多くの臨床治験が続々と実施され, パイプラインも増加している.このような製薬企業の動向について言及した上で,ヒトマイクロバイオーム研究から,どのような革新的製品が期待できるかについて議論してみたい.

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