日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-25
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一般口演
ダイオキシン母体暴露による雌児の低プロラクチン体質が育児期の母乳分泌に及ぼす影響
*袁 鳴武田 知起松下 武志伊豆本 和香藤井 美彩紀田中 嘉孝石井 祐次
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抄録

【目的】当研究室では、妊娠ラットへの 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD) 曝露が、育児期に prolactin 発現抑制を通して母乳量を低下させる事実を見出し報告している。さらに、prolactin レベルの抑制が次世代以降の雌児にも継承されることも見出している。またprolactinが乳汁分泌の促進的役割を担うことに関連して、TCDD曝露母体では、母乳分泌抑制が確認された。母乳は、新生児が必要とするすべての栄養素を供給するものであるため、本研究では、F0母体同様prolactinレベルの低下が見られ、母乳分泌の抑制が推定される次世代雌児に着目して、TCDD母体暴露が、次世代以降の第1 (F1)、第2 (F2)世代の雌児が妊娠出産後の母乳量と母乳成分に影響を及ぼす可能性について検討した。

【方法】妊娠 15 日目のWistarラットにTCDD (1 μg/kg) を単回経口投与して出産させ、7週齢でF1、F2世代雌児を妊娠させて、育児期にあたるF1およびF2世代雌児出産5日目に母乳を採取し、その母乳の分泌重量を測定し、母乳成分を分析した。

【結果及び考察】TCDD曝露母体より得たF1およびF2の雌では、出産5日目の母乳分泌量が、それぞれ減少傾向、および減少することが明らかになった。一方、泌乳初期のF1の乳タンパク質含量を調べたところ、総タンパク質濃度には変化がなかった。そこで、母乳中の主要タンパク質であるWAP (whey acidic protein) 量をウェスタンブロティングで確認したところ、その濃度が有意に上昇することがわかった。このことから、泌乳初期のF1母乳中の乳清タンパク質の組成は大きく異なり、F0母獣がTCDDに曝露されることでF1雌児が出産後の母乳ではWAPを除くタンパク質の総量が有意に減少することがわかった。

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