日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-157
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肝細胞研究に有用な新規培地の開発
*橋田 耕治吉用 賢治下間 志士
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抄録

肝臓は薬物の代謝において重要な役割を果たしており、初代ヒト肝細胞(PHH)を用いたin vitro試験は、創薬スクリーニングで最も重要な実験ツールの一つである。しかし、通常の培養法では肝細胞は増殖することはなく、薬物代謝機能を含めた肝機能も培養期間中に急激に低下することがこれまでに報告されている。一方で、研究用に提供される成熟で正常なPHHは不足しており、ヒト人工多能性幹細胞由来肝細胞(iPS-HEP)は、高価かつ倫理上問題のあるPHHを代替するという期待が持たれている。そこで我々は、PHHを培養する培地に注目し、培養期間中の肝機能の維持と薬剤スクリーニングに使用でき、さらにiPS-HEPの培養にも使用できる培地の研究開発に取り組んだ。初めに我々が開発した培地の性能について、肝臓で合成される分泌性タンパク質の一つであるアルブミンを指標とし、PHHが培養上清中に分泌したアルブミン量をELISAにより評価した。次に培養したPHHに薬物代謝酵素誘導剤を添加した際の代謝酵素の発現変動をリアルタイムPCR法により評価した。最後にiPS-HEPの分化誘導後期に本培地を使用して、iPS-HEPの肝機能についてELISAおよびリアルタイムPCR法により評価した。我々が開発した培地は、現在商業的に肝細胞の維持培養に利用可能な培地と比較してPHHが培養上清中に分泌したアルブミン量は同等であることを確認した。次に各培地で培養したPHHに薬物代謝酵素誘導剤を添加した際の代謝酵素の発現変動をリアルタイムPCR法により評価した結果、薬物代謝酵素の発現量も同程度であることを確認した。最後に、iPS-HEPが分泌したアルブミン量はPHHと同程度の発現量を示したのに対し、薬剤応答に関してはPHHのレベルには到達していないものの、同じ応答傾向を示すことがわかった。以上より、我々が開発した培地は初代ヒト肝細胞とヒト人工多能性幹細胞由来肝細胞に使用可能であり、多岐の肝細胞研究に使用できる培地として有望であることを報告する。

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