日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-185
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ダイオキシンは心奇形と無関係に後期浮腫を誘発しうる
*Wenjing DONG安達 光田中 勝貴寺岡 宏樹
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抄録

発達期ゼブラフィッシュを用いて、TCDDによる浮腫発生の重要な原因として、心臓機能障害について数多く報告されているが、どのように浮腫が生じるかについては明らかにされていない。また、我々は浮腫が心機能の低下に先んじて発生することから(Nijoukubo et al., 2018)、浮腫がTCDDによる心臓の形態形成異常や心機能に影響する可能性も考えられた。本研究では、TCDDによる心奇形と浮腫の関連について検討した。TCDD(1.0 ppb)による心臓前方浮腫および血流低下について受精後44 hr(hpf)から経時的に観察した。有意な浮腫は受精後46 hrに発生し、その後も増大し続けたが、大動脈血流速や推定心拍出量は54 hpfまで有意な影響を受けなかった。TCDDは心臓を顕著に縮小させ、96 hpfにおける心房と心室の長径がなす角度を鈍化させた。さらに、TCDDは心室の長径を有意に短縮したが、心房の長径については逆に延長させた。抗酸化経路の制御因子であるNrf2の賦活薬であるスルフォラファンは96 hpfにおけるTCDD誘発性心臓周囲浮腫を顕著に抑制したが、心拍出量低下、心房-心室角の鈍化、心室長径の短縮に有意な影響を与えなかった。心房と心室の角度形成に必要なTranscription factor 21(TCF21)は、スルフォラファン投与下でもTCDDで消失した。以上の成績から、TCDDは心臓形成に顕著な影響を及ぼすが、それ自体は必ずしも浮腫の発生につながるわけではなく、血漿成分の血管透過性増大が浮腫の発生に直接関与していることが示唆された。先んじて発生した浮腫は、TCDDによる一部の心臓の形態形成異常に関与するにとどまるものと考えられた。

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