主催: 日本毒性学会
会議名: 第49回日本毒性学会学術年会
開催日: 2022/06/30 - 2022/07/02
【目的】
ケラチノサイトは表皮における防御バリアに重要な役割を担っており、外部刺激に対してサイトカイン等を放出し、免疫細胞の活性化を誘導することが報告されている。放出される生理活性物質の中には痒みの惹起に関与する痒みメディエーターに分類されるものがあるがその詳細は不明である。痒みメディエーターはアレルギーを誘引する報告もあり、痒みに対する掻把から炎症に繋がることも考えられる。本研究では、肌に直接塗布される化粧品を使用した際に痒みが生じる場合があることから、化粧品に含まれている金属化合物に注目し、金属化合物がケラチノサイトの痒みメディエーター産生に及ぼす影響について解析した。
【方法】
培養ヒトケラチノサイト(PHK16-0b)に対して金属化合物(酸化アルミニウム、塩化アルミニウム)および、ヒスタミン、lipopolysaccharide (LPS)、phorbol 12-myristate13-acetate (PMA)を投与し、37℃、5 %CO₂条件で、MCDB153培地で24時間培養し、痒みメディエーターであるIL-31、IL-33、Thymic stromal lymphopoietin (TSLP)、Cathepsin S、Endothelin-1のmRNA発現量をリアルタイムRT-PCR法で測定した。
【結果・考察】
PMA 100 µmol/L、ヒスタミン300 µmol/L、LPS 2 mg/mLでの投与はIL-31およびIL-33のmRNA発現量を増加させたが、 TSLP、Cathepsin S、Endothelin-1には影響しなかった。金属化合物の投与はすべての痒みメディエーターで変化が認められなかった。金属化合物処置下では、ヒスタミンやPMAの投与によるIL-31およびIL-33の発現量上昇が増強される傾向が認められた。これらの結果から、金属化合物は直接痒みを引き起こすのではなく、ケラチノサイトの応答性を変調していることが示唆された。さらに種々の条件下でのケラチノサイトのIL-31およびIL-33 mRNA発現量を測定することにより、痒み発現につながる可能性を評価できると考えられた。