主催: 日本毒性学会
会議名: 第49回日本毒性学会学術年会
開催日: 2022/06/30 - 2022/07/02
PM2.5に代表される粒子状物質(Particulate matter; PM)は、慢性閉塞性肺疾患や気管支喘息など様々な呼吸器疾患の病状を悪化させることが知られている。その中でも、近年世界中で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において、PMがその発症率を増加させるという疫学的報告が存在している。しかし、PMがどのようなメカニズムで生体システムに影響を与え、COVID-19の発症を誘発しているのかについては明らかになっていない。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、宿主細胞表面上に発現しているACE2(angiotensin-converting enzyme 2)とTMPRSS2(transmembrane protease serine 2)という2種類のタンパク質を侵入口として利用しており、これらの発現量や機能の変動がCOVID-19の発症と関連していると予想される。そこで本研究では、種々のPMを曝露した際のACE2とTMPRSS2の発現を様々な角度から評価することで、PMがCOVID-19の発症に影響を与える分子メカニズムの一端を解明することを目的とした。実環境中より回収したPM2.5サンプルや、PM2.5の構成成分であり化学的組成が既知であるディーゼル排気微粒子、酸化チタン微粒子、黄砂などのPMを対象とし、これらをマウスやヒト肺胞上皮細胞株に曝露し、ACE2とTMPRSS2の発現量、肺内の発現細胞種、機能の変動などを評価した結果について紹介する。