日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-24S
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活性酸素種の誘導を介した銀ナノ粒子による胎盤合胞体化の抑制
*坂橋 優治東阪 和馬泉谷 里奈Jiwon SEO北原 剛小林 純大仲本 有里菜山本 怜奈辻野 博文芳賀 優弥堤 康央
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抄録

【目的】ナノマテリアル(NM)の開発および利用拡大が進展し、我々は老若男女を問わずNMを曝露する機会にある。一方で、NMの安全利用において肝心であるハザード情報の収集は遅れており、とりわけ妊娠中の母体に対する情報収集の不足が、世界的に指摘されている。本観点から我々は、妊娠維持を担う胎盤に着目し、NMの胎盤毒性解析に取り組んでおり、これまでに、粒子径10 nmの銀ナノ粒子(nAg10)の曝露が、胎盤細胞の合胞体化過程を抑制し得ることを報告してきた。一方で、nAg10がどのような機序で胎盤細胞の合胞体化を抑制するかは、明らかではない。そこで本研究では、nAg10による合胞体化の抑制に対する活性酸素種(ROS)の関与に焦点を当て、その機序解明を試みた。

【方法】ヒト絨毛癌細胞株であるBeWoに、合胞体化の誘導試薬であるforskolin(frk)とnAg10を共処置し、細胞内におけるROS産生を免疫染色により評価した。また、抗酸化剤であるN-アセチルシステイン(NAC)を細胞に共処置した際の合胞体化関連分子の発現変動をRT-PCRにより解析した。

【結果・考察】まず、frkとnAg10を共処置した際の細胞内ROS産生を評価したところ、nAg10添加により細胞内ROS産生が増加することが示された。そこで、nAg10と共にNACを処置し、合胞体化マーカーであるhCGβ、および、合胞体化促進に係るsyncytin-2の発現を評価した。その結果、nAg10処置時に認められたこれら遺伝子の発現抑制が、NAC処置により緩和されることが示された。以上より、nAg10による合胞体化抑制にROSの関与が示唆された。現在、主要なROS産生部位であるミトコンドリアに対し、nAg10がハザードを呈することで合胞体化が抑制されている可能性を考え、その機序解明を進めている。

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