日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-255
会議情報

ポスター
全身影響に基づくPDEから設定した洗浄基準と皮膚感作性強度に基づくAcceptable Surface Limitの比較
*福島 麻子林 多恵武吉 正博
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

背景:共用施設での医薬品製造において、交叉汚染防止の観点から健康べ―ス曝露限度値 (HBEL) の設定が求められている。HBELは通常、全身影響に基づくPermitted Daily Exposure (PDE) として設定され洗浄基準 (swab limit) の設定に利用されており、感作性を考慮したHBEL設定は行われていない。著者らは、これまでに皮膚感作性に基づく作業者リスク管理のための許容値としてLLNA: BrdU法のEC1.6値に基づくAcceptable Surface Limit (ASL) を提案している。本研究では、PDEから得られるswab limitと皮膚感作性強度に基づき設定したASLの比較を行い、作業者リスク管理の観点から皮膚感作性に基づくASL設定の必要性について検討した。

方法:皮膚感作性GHS区分1Aの1,4-フェニレンジアミン及び区分1BのシクラメンアルデヒドのPDEを設定した。当該PDEに基づき、同一製造ラインで次に製造される製品のバッチサイズを100 kg、接触部面積を25,000 cm2、一日最大投与量を10 g/dayと仮定し算出したswab limit とASLを比較した。さらにPDE値が 0.01、0.1、1、10、100 mg/dayを仮定した場合のswab limitと区分1A /1B物質のASL 幅を比較した。

結果:1,4-フェニレンジアミンのPDEはラット反復投与毒性試験のNOAELから0.89 mg/day、swab limitは35.6 mg/100 cm2と算出され、EC1.6から設定した感作性強度に基づくASL 0.031 mg/cm2の1,000倍超となった。シクラメンアルデヒドのPDEはラット生殖毒性試験のNOAELから8.3 mg/day、swab limitは332 mg/100 cm2と算出され、ASL 5.76 mg/100 cm2の50倍超となった。このことから、皮膚感作性物質について、PDEに基づく洗浄基準では作業者の皮膚感作性リスクを管理できない可能性が示された。PDE値が 0.01、0.1、1、10、100 mg/dayを仮定した場合のswab limit (0.4~4,000 mg/100 cm2)とASL 幅の関連を検討した結果、区分1A 物質ではPDE>0.01 mg/day、区分1B 物質ではPDE>0.1 mg/dayにおいてswab limitはASLを上回る可能性が示された。

結論:作業者の感作性リスク管理の目的では皮膚感作性強度に基づくASLによるリスク管理が望ましい場合があることが示された。

著者関連情報
© 2022 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top