主催: 日本毒性学会
会議名: 第49回日本毒性学会学術年会
開催日: 2022/06/30 - 2022/07/02
我々は正常組織への影響を低減し腫瘍選択的な活性を誘導する目的で、細胞外ATP濃度依存的にCD137に結合し、CD137アゴニスト作用を発揮するSwitch-IgTM、STA551を創出した。STA551は従来の抗CD137抗体に比べ、全身における免疫反応が低減していることが示されている。STA551は正常組織と比較し腫瘍組織において標的へ高い結合を示すことが期待されているが、スイッチ抗体の標的への結合をin vivoでATP濃度を変えずに検出することは技術的に困難であった。本研究では、二光子顕微鏡による生体イメージングを用いてSTA551のin vivoにおける標的細胞への結合を検出することで、腫瘍選択的に標的細胞に結合することにより全身免疫活性化を低減するコンセプトの検証を試みた。
ヒトCD137ノックインマウスにマウスのがん細胞株であるLLC1/OVA/hGPC3を担癌し、マウスFcγ受容体への結合を増強した抗ヒトCD137抗体を蛍光標識して静脈内投与した。フローサイトメトリー及び生体イメージングにより腫瘍組織及び脾臓にて抗体が結合した細胞を検出した。
フローサイトメトリーの結果より、CD137分子の発現は脾臓より腫瘍の方が高く、CD137を発現していた細胞は主にT細胞及びNK細胞であった。生体イメージングより、従来の抗CD137抗体とスイッチ抗体のどちらも腫瘍組織での結合が検出された。一方、脾臓におけるスイッチ抗体の蛍光シグナルは従来の抗CD137抗体と比較して非常に弱く、コントロール抗体と同程度であった。
二光子顕微鏡を用いた生体イメージングによってin vivoにおけるスイッチ抗体の生体内分布の評価に成功した。本結果よりSTA551は腫瘍選択的な結合を示すことが明らかとなり、全身の免疫活性化を回避し抗腫瘍効果を発揮するというコンセプトが説明された。