日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-62S
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発達期ニューキノロン系抗菌薬(TFLX)投与による成熟後の行動影響と腸内細菌叢解析
*長谷川 彩乃佐々木 貴煕原 健士朗Jahidul ISLAM野地 智法種村 健太郎
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抄録

【背景】抗生物質は、様々な疾患に対し子供達に頻繁に処方される一方、幼少期投与で健康に対する様々な長期的影響を惹起することが報告されている。ニューキノロン系抗菌薬(NQ)の「トスフロキサシントシル酸塩水和物(TFLX)」は、NQの中でも小児投与が承認される希少な抗菌薬である。しかし、TFLXの発達期投与が及ぼす成熟後の影響に対する知見は乏しい。一方、抗生物質が腸内細菌叢をかく乱することによって脳機能変調をもたらすという報告もある。そこで本研究では、無毒性量TFLXの発達期投与における成熟後の行動影響及び腸内細菌叢の変動を明らかにするため、投与時期による影響の差異を比較検討した。

【方法】C57BL/6N雄マウスをTFLX-Ⅰ群、TFLX-Ⅱ群、対照群に分けた。TFLX-Ⅰ群では発達期(4週齢-6週齢)、TFLX-Ⅱ群では性成熟後(8週齢-10週齢)においてTFLX連続飲水投与を行った。対照群では、各期間とも溶媒のみを投与した。TFLXは、無毒性量の300 ppmに設定し、溶媒に溶解して水道水で調製した。各群、11週齢時に行動試験を実施した。その後解剖して摘出した直腸から糞便を採取し、16S rRNA解析を行った。

【結果・考察】行動試験の結果、TFLX-Ⅰ群では、自発的活動量の有意な低下が見られ、特に初期反応に関する活動量低下が顕著に現れた。更に、空間連想記憶に関して対照群との質的違いが見られた。一方TFLX-Ⅱ群では、自発的活動量のみ対照群との有意差が見られた。以上より、TFLX投与によって行動変調が誘発されたと考えられる。特に、発達期投与群では、不安様行動増大ならびに記憶想起変調リスクも示唆された。よって本研究により、発達期TFLXの投与は、無毒性量であっても成熟後の行動に影響を及ぼすことが明らかとなった。腸内細菌叢は現在データの解析中であり、それらの結果も併せて報告する。

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