日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-71S
会議情報

ポスター
YAPとの相互作用に着目した核内受容体CAR依存的な肝発がんプロモーション作用の種差解析
*牧田 夏希志津 怜太曽部 圭一郎保坂 卓臣菅野 裕一朗佐々木 崇光吉成 浩一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

肝に高発現する核内受容体CARは、異物代謝酵素の発現調節を担う一方、その活性化は齧歯動物において肝細胞増殖とそれに伴う肝がんを惹起する。疫学的な研究から、このCAR依存的な肝発がんには種差があり、ヒトでは起こらないとされているが、分子レベルでの理解がなされていない。最近、当研究室では、マウス肝において、CARは細胞増殖促進因子であるYAPの活性化を介して肝細胞増殖を誘導することを明らかにした。そこで本研究では、CAR依存的な肝細胞増殖の種差の原因を明らかにすることを目的とし、CARとYAPの相互作用を種差に着目して解析した。まず、CARとYAPの相互作用に種差があるか否かを明らかにするため、マウスおよびヒトのCARとYAPの組換えタンパク質を調製し、インビトロプルダウンアッセイを行ったところ、マウスCARはマウスYAPと相互作用したが、ヒトのCARとYAPは相互作用しなかった。さらに YAPの部分欠失変異体を用いた解析により、YAPはWWドメインでマウスCARと相互作用することが明らかになった。WWドメインは、PPXYのアミノ酸配列(PYモチーフ)と相互作用することが知られているが、マウスCARはそのタンパク質構造の表面にPYモチーフ(PPAY)をもつのに対し、ヒトCARでは対応する配列がPPAHとなっていた。そこで、マウスCARのPYモチーフをヒト型に変異させたマウス(CAR-Y150Hマウス)を作製し、CAR活性化薬のフェノバルビタール(100 mg/kg)を3日間腹腔内投与し、肝細胞増殖およびYAPの活性化を調べたところ、野生型マウスで認められたCAR依存的な肝細胞増殖およびYAPの活性化はCAR-Y150Hマウスでは認められなかった。以上の結果より、CAR依存的な肝細胞増殖のヒトと齧歯動物間の種差は、PYモチーフの一アミノ酸の差異によって決まる可能性が示された。

著者関連情報
© 2022 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top