主催: 日本毒性学会
会議名: 第49回日本毒性学会学術年会
開催日: 2022/06/30 - 2022/07/02
魚類短期繁殖試験(TG229)は、化学物質の魚類の生殖機能障害を誘発する内分泌かく乱作用を評価するスクリーニング試験である。TG229ではファットヘッドミノー、メダカあるいはゼブラフィッシュに被験物質を曝露し、産卵数、ビテロジェニン(vtg)、生殖腺の病理学的変化及び2次性徴への影響を指標に評価する。TG229はエストロゲン、抗エストロゲン、アンドロゲン及びステロイド合成阻害の4種の作用について検出できるが、内分泌かく乱作用の有無の判断が目的であり、いずれの作用かを明らかにする試験ではないとされている。これら4種の作用についての有害性発現経路(AOP)はすでに確立されており、産卵数の減少やvtgの変動などがAOPのキーイベントとなっている。よって、TG229の試験結果から、いずれの作用なのかについてはある程度判別することが可能である。エストロゲン作用については、雄のvtgの増加により特定可能である。抗エストロゲン作用及びステロイド合成阻害については、雌のvtgの減少及び産卵数の減少により推定可能であるが、厳密には両者は区別できない。アンドロゲン作用については、雌における雄様の2次性徴が発現することにより特定可能である。雄様の2次性徴とは雄化の指標となる外観の形態変化で、メダカでは臀鰭尾部側における乳頭状突起の形成、ファットヘッドミノーでは頭部における繁殖結節の形成であり、AOPのキーベントには含まれていない。これらの雄様の2次性徴の発現はアンドロゲンにより制御されており、アンドロゲン様物質に対する感度はvtg及び産卵数の変化よりも高いことが報告されている。一方、ゼブラフィッシュでは明らかな雄様の2次性徴は発現しないため、この指標を評価に用いることはできない。本発表では、TG229において評価する4つの指標についてAOPと感受性の観点からそれらの特長について説明する。