日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: O3-29
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一般演題 口演 7
閉経後乳がん細胞モデルにおけるビスフェノールA代謝物MBPによるエストロゲン受容体のリガンド非依存的活性化
*平尾 雅代瀧口 益史竹田 修三
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抄録

【目的】環境化学物質のビスフェノールA (BPA)は、その曝露と乳がん悪性化との関連が指摘されている。この要因の一つとして、BPAによるエストロゲン受容体(ER)の活性化が考えられているが、悪性化を説明しうる十分なエビデンスはない。我々はER陽性ヒト乳がんMCF-7細胞において、BPAの代謝物MBPがBPAよりも低濃度(< 1 nM)でERβの活性化と呼応した細胞増殖を来すことを見出した(Mol. Pharmacol., 95: 260, 2019; BPB., 44: 1524, 2021)。我々はBPAをはじめ、ER刺激作用を有する化学物質に曝露されているが、これら化学物質に対する感受性は閉経を起点として著しく変化する可能性がある。本研究では、MBPに注目し、作製したin vitro閉経後乳がんモデルであるLTED細胞を用いて、MBPの曝露とがん悪性化の機構を明らかにすることを目的とした。

【方法】MCF-7細胞をエストロゲン枯渇条件下で6ヶ月以上培養して得られたLTED細胞を閉経後ER陽性乳がん細胞モデルとして用いて、種々の生化学的解析を行った。

【結果および考察】LTED細胞をMBPで処理し、ERα/ERβの発現およびERを介した転写活性を解析した。MBPはERαの発現を低下させ、ERβの発現を誘導した。この時、ERを介した転写が亢進したことから、MBPはERβを介した転写を正に調節することが示唆された。MBP誘導性の転写活性はERβの選択的アンタゴニストによる影響を受けなかったが、MEK1/2阻害剤ならびにPI3K阻害剤により抑制された。以上より、閉経後乳がん細胞モデルであるLTED細胞において、MBPはERαとERβの発現バランスを破綻させ、リガンド非依存的に(おそらくリン酸化シグナルを修飾することで) ERβを活性化させることが明らかとなった。

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