主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
【目的】IL-21Rはリンパ球の成熟や自己免疫疾患など免疫機能に関与するとされているが、本研究は、エネルギー代謝関連臓器である肝におけるIL-21Rの(病態)生理学的意義について検討することを目的に、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)発生への関与を解析した。
【方法】実験は、6週齢のC57BL/6J系雄性の野生型またはIL-21R全身欠損マウスに、普通食・CDAA-HF-T(-)(脂質45 kcal%、トランス脂肪酸非含有ショートニング;メチオニン0.1%)を4週間または13週間投与して解剖し、各種の解析を行った。また、ヒト肝星培養細胞株LX-2を用いて、TGF-β1(10 ng/mL)あるいはIL-21(50 ng/mL)を単独または同時に刺激し、肝星細胞の活性化に関する評価を行った。
【結果】CDAA-HF-T(-)投与において、肝のIL-21およびIL-21R発現が増加した。IL-21R欠損CDAA群では、肝脂肪蓄積・血中ALT活性・炎症関連遺伝子発現は野生型と同様に増加した一方、Sirius Red陽性組織、Collagen、細胆管反応としてのSox9・CK19など、線維化関連遺伝子発現およびタンパクは野生型と比較して低下を示した。LX-2においては、TGF-β1の刺激により各種星細胞活性化関連指標に加え、IL-21R遺伝子発現が誘導され、それはTGF-β type 1受容体阻害剤前処置により抑制された。IL-21刺激により、αSMAの増加と一過性のCollagen type 4 遺伝子発現の増加がみられた。さらに、TGF-βとIL-21の同時刺激により、さらなる星細胞の活性化が示唆された。
【結論】CDAA-HF-T(-)投与により誘発されるマウスNASH病態においてIL-21Rは、肝の脂肪化・炎症に関与せず、肝線維化の進行に特異的に関与する可能性が示された