日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: O3-35
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一般演題 口演 8
ラット近位尿細管上皮細胞におけるオクラトキシンA曝露に伴う小核形成の解析と関連遺伝子の発現プロファイリング
*小澤 俊介尾城 椋太唐 倩鄒 昕羽酒巻 友里菖蒲谷 桃香吉田 敏則渋谷 淳
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抄録

【目的】カビ毒オクラトキシンA (OTA)は、ラットへの投与により腎臓髄質外層外帯 (OSOM)の近位尿細管上皮細胞特異的に巨大核を形成して腎細胞癌を誘発するが、その発がん機序は不明である。本研究ではOTA誘発腎発がんに対する小核の関与の可能性を探るため、発がん標的細胞での小核形成の有無と、小核形成との関連が示唆される遺伝子を網羅的に探索した。

【方法】ラット近位尿細管上皮NRK-52E細胞を用いたOTA のin vitro小核試験を実施した。次にラットに腎発がん物質として巨大核を誘発するOTAと1,2,3-トリクロロプロパン (TCP)、誘発しない3-クロロプロパン-1,2-ジオール (MCPD)の発がん用量を4ないし13週間反復投与し、OTAとMCPDの13週間投与例でOSOMにおけるRNA-Seqを実施し、OTA特異的な発現変動遺伝子を対象に、遺伝子オントロジー(GO) termに基づくエンリッチメント解析及びqRT-PCRによる検証解析を実施した。さらに発がん物質の投与全群でOSOMにおけるγH2AX陽性小核数を定量的に求めた。

【結果・考察】OTA処理したNRK-52Eで細胞毒性が見出されない濃度から小核数が増加した。エンリッチメント解析により紡錘体形成等の染色体不安定性に関連するGO termが見出され、qRT-PCR検証解析でDNA二本鎖切断修復に寄与するRad51Rad51ap1や紡錘体形成に関わるNuf2Ska2、細胞増殖や細胞周期の制御に寄与するMcm3, 6Cdkn1aなどがOTA特異的に発現増加した。さらにTCP及びOTA投与群のOSOMでγH2AX陽性の小核出現頻度が増加傾向を示した。以上、OTAはOSOMの尿細管上皮細胞に巨大核誘発と関連して小核形成を誘導し、有糸分裂制御の破綻を介したDNA二本鎖切断の誘導が示唆された。

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