主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
【背景】Precision-cut lung slices(PCLS)は、肺を薄切したもので、Ex vivo培養を行うことで種々の化合物による肺機能の評価を行う事ができる。ブレオマイシンは、薬剤性間質性肺炎の原因であるが、線維化の作用機序は不明である。そこで、ブレオマイシンによる肺傷害のメカニズムを明らかにするため、肺線維症モデル(iUIPマウス)由来PCLSを作製し、ex vivo培養下で検討を行った。【方法】肺線維症様病理組織像 (Usual interstitial pneumonia, UIP) を示すiUIPマウスを樹立した。肺炎未誘導 (正常肺) および肺炎誘導(iUIP肺)由来PCLSを作製し、ブレオマイシン添加ex vivo培養を行った。1)ブレオマイシンによる毒性試験として、細胞増殖能の測定を行った。また組織学的な解析として、Ki-67, γH2AX免疫染色およびTUNEL染色を行った。2)炎症状態の指標として、Il-6遺伝子発現量、培養上清中の遊離IL-6濃度を測定した。3)線維化指標として、Col1a1遺伝子発現量等を測定した。【結果】1)ブレオマイシン添加正常肺由来PCLSでは細胞増殖能に変化がなかったが、iUIP肺由来PCLSでは有意な減少がみられた。またiUIP肺では、TUNEL陽性細胞の顕著な増加が見られ、γH2AX陽性細胞の増加も観察されなかった。2、3)正常肺、iUIP肺ともに上清中IL-6は検出できず、Col1a1発現量の上昇も確認できなかった。【考察】ブレオマイシンは、線維化を直接誘導できない。iUIP肺ではブレオマイシンによるDNA修復能の低下がみられ、細胞毒性の感受性が高くなることが示唆された。これまでのin vivoデータ等を併せて考量すると、ブレオマイシンによる細胞死などの2次的な要因が線維化を促進すると考えられる。