主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
毒性学の分野において、動物実験の代替法の一つである生体模倣システム(MPS)やスフェロイド・オルガノイド技術が注目されるようになった。MPSは、各種の工学的技術と細胞技術の組み合わせにより構成されている技術の総称でもあり、近年の技術の進展に伴い、種々の領域における採用が進み、パラダイムシフトを構成する要素技術として発展してきている。我々は水平方向共培養容器(HTCP)をベースとしたMPSの開発を行った。これらの評価結果が今後の毒性学研究に役立つと考え報告する。方法と結果)1)容器における物質の移動特性の評価:我々は、グルコース・乳酸・アンモニアの移動量について、HTCP容器の数・フィルター孔径を変えて測定した。それぞれの移動特性は、曲線式で表すことができた。移動特性は、フィルターの孔径と容器の数・細胞を播種する容器の位置により、規定されていた。細胞外小胞も同様に経時的に隣側容器へ移動した。2)容器の細胞の分泌特性の評価:フィルター上に位置させた細胞の分泌現象はフィルターが接着していない細胞部分のみに観察された。細胞外小胞の分泌現象を効率よく再現するためには、フィルターと細胞が直接接着しない構造が必要であると考えられた。3)前述の結果より、細胞の分泌現象をより正しく再現するためには、接着面のより少ないスフェロイドで共培養できることが有用と考えられた。結語)我々は、微細加工技術を応用してスフェロイド・オルガノイド共培養や一方向性培地還流可能なシステムを構築し、CD63-GFP発現細胞を用いて、一方向性の培地還流を確認した。細胞毒性研究のための動物実験代替可能ツールとして、スフェロイド共培養も可能なMPSは、候補の一つであると考えられた。