主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は適応が拡大しがん免疫療法に大きな期待が寄せられている。一方で、従来とは異なる有害事象の報告も増加しているが詳細な発症機序は不明な点も多い。我々は、抗PD-L1抗体を複数回投与後に全個体が死亡する極めて重篤なアナフィラキシーにを発症する担癌マウスを発見した。このアナフィラキシーは移植するがん細胞によって重症度が異なり、まったく症状が出ない担癌マウスも存在した。従って、がん病態で変化する何らかの要因が抗PD-L1抗体に対するアナフィラキシー症状に影響していると考えられた。 一般に薬剤性アナフィラキシーは抗薬物抗体(ADA)としてIgEがFcε受容体を介して肥満細胞などがケミカルメディエーターとしてヒスタミンを産生することで発症する。しかし本アナフィラキシーは、抗PD-L1抗体のADAとしてIgGが産生した。マウスで抗薬物IgG抗体がFcγ受容体を介し骨髄系細胞から血小板活性化因子(PAF)が産生する経路が報告され、近年ヒトでも明らかになりつつある。実際にアナフィラキシー発症マウスの血中PAF量が増加し、PAFアンタゴニストの処置でアナフィラキシー症状が改善した。またアナフィラキシーの重症度は骨髄系細胞増加と相関していた。単離骨髄系細胞の解析から、PAF産生細胞として好中球とマクロファージを同定した。担癌マウスでこれらを除去するとアナフィラキシー症状が抑制された。 以上より、がん病態で増加する好中球やマクロファージがICIに対するアナフィラキシーを増悪させることを明らかとした(Arai T, et al. J ImmunoTher Cancer, 2022)