日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-001E
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優秀研究発表賞 応募演題 口演 1
ヒト肝細胞の三次元構造体を利用したin vitroモデルにおけるアンチセンス核酸医薬のヒト肝毒性評価法の開発
*井上 愛優前川 敏彦正木 慶昭清尾 康志神谷 紀一郎
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抄録

核酸医薬品は、低分子医薬品や抗体医薬品と異なり細胞内分子を標的にできるため、従来の医薬品では治療が困難であった疾患を根治する可能性を秘めた次世代革新的医薬品として近年注目されている。核酸医薬にはその構造や作用機序によっていくつかの種類があるが、その中でもアンチセンス核酸(ASO)は最も開発が進んでおり、承認済みのASOに続いて様々な疾患に対する開発が進んでいる。一方で、既に承認されたASOにおいてもヒトに投与することで肝毒性が発現することが報告されており、開発初期に当該リスクを評価することは ASO 開発において重要である。しかしながら、ASOでは標的配列と類似した核酸配列へクロスハイブリダイズするオフターゲット効果に起因した毒性発現が想定されるため、核酸配列がヒトと異なる動物を用いた評価は原理的に難しく、「ヒト」を対象とした評価法開発が望まれている。 我々は、既に独自の細胞性三次元組織構築技術を活用して作製したヒト肝臓細胞のみからなる肝臓構造体が低分子医薬品の薬物性肝障害の評価に有用であることを報告してきた。具体的には、スフェロイド化したヒト初代培養肝細胞をバイオ3Dプリンタを使って積層し、得られた肝臓構造体を96ウェルプレートの1ウェルに1個配置した「ヒト3Dミニ肝臓」として提供している。本製品は約1ヶ月の長期培養が可能であり、安定した薬物代謝機能を有することを特徴としている。そこで、「ヒト3Dミニ肝臓」を用いたASOのオフターゲット毒性評価の可能性を探ることを目的に、ASOを添加した培地中で約2週間培養した「ヒト3Dミニ肝臓」を定量的に評価した。その結果、構造体中のATP量や培地へのアルブミン分泌量のASO濃度依存的な低下が観測され、迅速かつ容易にASOのヒト肝毒性を予測できる可能性を見出したので報告する。

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