日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: OS2-3
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公募シンポジウム2: 抗ウイルス薬の開発研究とその展望
抗ウイルス薬ニルマトレルビルの薬効と安全性評価
*小林 雅典
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抄録

【背景】ニルマトレルビルはCOVID-19患者の治療薬として経口投与可能なSARS-CoV-2メインプロテアーゼ(3CLプロテアーゼともよばれる)の強力かつ選択的な阻害薬で,低用量のリトナビルと併用投与される。リトナビルは臨床において,ニルマトレルビルのCYP3A4を介した代謝を阻害することにより曝露量を増加・維持させることで薬効を発揮する。

【薬効評価】In vitro試験では,ニルマトレルビルのSARS-CoV-2メインプロテアーゼに対する選択的な阻害が示された。また, SARS-CoV-2の臨床分離株および変異株に対する抗ウイルス活性が示された。In vivo試験では,マウス適合SARS-CoV-2感染モデルにおいてニルマトレルビルの抗ウイルス活性が示され,リトナビル併用により肺組織に対する保護効果が改善した。

【安全性評価】ニルマトレルビルの非臨床安全性試験は,ICH M3(R2)「医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための非臨床安全性試験の実施についてのガイダンス」に基づいて実施した。ラットおよびサルの一般毒性試験ではいずれの試験においても最高用量まで毒性学的に意義のある変化はみられなかった。各遺伝毒性試験の結果は陰性であった。ウサギ胚・胎児発生試験の最高用量において母動物の摂餌量および体重増加量に対する軽微な影響によるものと考えられる胎児体重の低下がみられたものの,その他の検査において異常はみられなかった。また,ラット受胎能および周産期試験においても最高用量まで毒性学的に意義のある変化はみられなかった。これらの結果から,ニルマトレルビルは重大な毒作用の懸念を示さなかった。また,ニルマトレルビルおよびリトナビルの間に相加または相乗される毒性は見い出されなかった。

【結論】以上より,ニルマトレルビルおよびリトナビルの併用による臨床適用が適切に裏付けられた。

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