日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: OS2-2
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公募シンポジウム2: 抗ウイルス薬の開発研究とその展望
抗インフルエンザ薬バロキサビルマルボキシルの開発における毒性学的考察
*加藤 祐樹西村 亨平福島 民雄
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抄録

インフルエンザ治療薬は、基本的に短期間投与であるため、慢性毒性試験やがん原性試験が不要である。また、哺乳類には存在しない因子を薬理標的とするため、オンターゲット性の毒性を考慮する必要性が低い。ただし、化合物の潜在的な細胞障害性を確認したり (治療係数の算出)、ヒト細胞ポリメラーゼやミトコンドリアDNAに対する影響を考慮したりする必要がある。本シンポジウムでは、抗インフルエンザ薬バロキサビルマルボキシルを例に、抗ウイルス薬開発における非臨床安全性評価の留意点について紹介する。バロキサビルマルボキシルは、ラット一般毒性試験において、ビタミン K の摂取が不足する摂餌条件下で反復経口投与した場合に、ビタミンK不足に起因すると考えられるプロトロンビン時間及び活性化部分トロンボプラスチン時間の延長が認められた。国内製造販売後に本剤との因果関係が否定できない血便、鼻出血、血尿等の出血関連症例が報告されたことから、現在は出血を重要な特定されたリスクとして、日本の医薬品リスク管理計画書に記載している。さらに、本剤のサル一般毒性試験においては、病理組織学的な変化を伴わないものの、肝機能障害を示唆する血液化学的検査値の上昇が認められた。臨床試験では、本剤投与群とプラセボ群で肝機能障害の発現リスクに明確な差は認められなかったものの、肝機能障害を重要な潜在的リスクとして記載している。本シンポジウムでは、これらの非臨床試験成績を振り返るとともに、臨床試験結果及び市販後調査結果と照らし合わせ、非臨床段階におけるリスクアセスメントの適切性についても議論したい。

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