主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
重度の肝障害は医薬品開発の中止や市場撤退の要因となっており、開発の初期段階での肝有害事象の予測性の向上が望まれている。そのなかでも、薬物性胆汁うっ滞は、ヒト肝細胞で胆汁排泄能を有する毛細胆管ネットワークの形成が困難であったため、再現性良く高感度に胆汁排泄をin vitroで評価することが難しかった。また、胆汁排泄には種差が存在することから、動物実験に頼らず、ヒトにおける胆汁うっ滞リスクを評価できるin vitro試験系が求められてきた。以上の背景を元に、我々は、ヒト凍結肝細胞で胆汁排泄能を有する毛細胆管ネットワークを形成するための培養方法の確立を試みてきた。その結果、iPS細胞由来肝細胞を長期培養することで毛細胆管の形成が促進されることを見出した。(Horiuchi et al. Sci Rep. 2022)さらに、現在、この培養方法を用い、複数ドナーのヒト凍結肝細胞において毛細胆管を形成させ、胆汁排泄能のドナー間差の評価を進めている。また、ヒト肝キメラマウス由来の肝細胞においても胆管形成されることを見出した。以上の知見を元に、ヒト凍結肝細胞、iPS細胞由来肝細胞、ヒト肝キメラマウス由来肝細胞などの肝細胞資源を胆汁排泄の視点から比較検討することで、胆汁排泄から肝細胞を見直し、in vitro評価系に求められる肝細胞の特性:「肝臓らしさ」を考えてみる。