日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: OS4-4
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公募シンポジウム4: New modalityに対する初期毒性評価戦略
標的タンパク質分解誘導薬の非臨床毒性評価戦略とその課題
*今岡 尚子
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抄録

創薬の新たなモダリティのひとつとして、従来undruggableとされてきた細胞内の標的タンパク質を分解するtarget protein degrader(TPD)の研究開発が活発化している。これまで臨床に移行した化合物は10数個存在するが、その多くはPh1段階にあり、各化合物のヒトにおける毒性プロファイルは必ずしも明らかになっていない。TPDは標的タンパク-化合物-E3リガーゼの3者複合体が標的タンパクのユビキチン化修飾に適した立体配置になった時にのみ分解活性を示すことから、相同タンパクの立体構造の種差に起因する「動物にしか認められないオフターゲット毒性」及び「動物では検出できないヒトのオフターゲット毒性」が問題となることが予想される。後者については、ヒト細胞を用いた毒性検出プラットフォームが確立されつつあるが、動物細胞を用いたプラットフォームについてはまだ整備されていない。 また、TPDの非臨床毒性評価に関する規制もまだ整備されていない。TPDは低分子化合物の範疇にあることから、適応疾患に応じてICH M3あるいはS9に沿って評価が実施される。従って、げっ歯/非げっ歯類の各1種を用いた毒性試験が必須なのが現状である。動物種選択に際して、標的組織でのオンターゲットタンパク分解の有無を確認するのが一案だが、その検出法はwestern blottingあるいはLC/MS/MSであり、抗体の適用性やデータベースの種差が大きい。また、ヒト細胞に対して同等の標的タンパク分解活性を持つ化合物であっても、動物種によって相同タンパクの分解活性が異なる場合が指摘されており、創薬のどのステージで、あるいはどの化合物で種の選択を行うかの判断が難しい。本講演では、上述のポイントを含むTPD創薬における非臨床毒性評価の現状と問題点をまとめる。今後の展望や有用な知見、評価方法に関する情報交換を行う場としたい。

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