日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-004E
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優秀研究発表賞 応募演題 口演 1
メタロチオネイン過剰発現絨毛外性栄養膜細胞HTR-8/SVneoの遊走能評価
*小串 祥子田中 亮也中西 剛木村 朋紀
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抄録

【目的】母体血中Cd濃度と早期早産にエコチル調査において関連性が見出された。胎盤は細胞性栄養膜細胞が絨毛外性栄養膜細胞(EVT)や合胞体性栄養膜細胞(ST)に分化し、EVTが母体側に浸潤することで形成される。その過程が不完全であると妊娠高血圧症候群を発症し、早期早産につながると考えられる。これまでの研究より、CdがEVTへの分化をとくに阻害し、EVT機能を低下させること、また、STはEVTに比べて金属結合タンパク質メタロチオネイン(MT)の発現が高いことを明らかにした。MTはCdなど有害金属の毒性軽減作用を持ち、11種類のアイソフォームが存在する。本研究では、EVTはMTによる防御効果が乏しいためにCdの影響を受けやすい可能性を考え、MTを過剰発現させたEVTの遊走能やそれに対するCdの影響について調べた。【方法】レンチウイルスベクターを用いて、EVT様の細胞株HTR-8/SVneoにいくつかのMTを過剰発現させ、遊走への影響を評価した。遊走能は創傷治癒アッセイおよびトランスウェルアッセイによって評価した。創傷治癒アッセイでは、細胞を掻き取ってから48時間後の傷の埋まり具合を比較した。トランスウェルアッセイでは、インサートに細胞を播種してから18時間後に、底面のメンブレン膜を通過した細胞のみを染色することで、遊走細胞数を評価した。【結果・考察】検討したすべてのMT発現細胞において、Cdによる細胞毒性の軽減が観察されたが、MT1E、1M、1X、2A発現細胞では、Cdの有無に関係なく遊走が阻害された。MT1G発現細胞では、Cdによる遊走阻害の抑制が見られた。遊走への影響はアイソフォーム間で異なっている可能性が示唆されたが、多くのMTアイソフォームはCdの毒性を軽減する一方で、EVT遊走を阻害するため、遊走能を維持するために発現が低く保たれているのではないかと考えられる。

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