日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-022E
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優秀研究発表賞 応募演題 口演 1
サイトカイン放出症候群モデル動物を用いた心毒性の検討
*稲井 洋平仁平 開人南谷 賢一郎
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抄録

目的:サイトカイン放出症候群(CRS)は全身に種々の影響を及ぼすが、その詳細な機序は明らかではない。本検討では生命予後に影響する心毒性に着目し、マウス及びカニクイザルのCRSモデルを用いて、その発現機序を検証した。方法:雄性マウスにリポポリサッカライド(LPS)を単回腹腔内投与(実験①)、雄性カニクイザルにLPSを2時間infusion投与(実験②)し、それぞれ投与24、48時間後まで経時的に一般状態観察や臨床検査を行った後、剖検及び病理組織学的評価を行った。また、雄性カニクイザルにCRSを誘発することが確認された抗体Xを100、1000 µg/kg単回静脈内投与し、経時的な一般状態観察、臨床検査を行った(実験③)。結果:実験①;投与3時間後をピークに高サイトカイン血症を認め、投与7~24時間後に自発運動低下/重度体温低下に至った。投与24時間後に心筋細胞の変性/壊死及び水腫変性、血清トロポニンT(TnT)の増加が認められた。実験②:投与2~6時間後に高サイトカイン血症を認め、投与48時間後までに血圧低下、摂餌廃絶、好中球/CRPの増加等を認めた。また、高サイトカイン血症の程度が最も強い個体で一過性かつ軽微に血清TnTが増加したが、心臓の病理組織学的異常は認められなかった。実験③:いずれの用量においても投与2~4時間後に高サイトカイン血症を認めた。1000 µg/kg投与個体は、投与24時間までに嘔吐、摂餌廃絶を認め、投与24時間後では重度の血圧低下、血清TnTの顕著な増加が認められた。考察と結論:明らかな高サイトカイン血症があっても心毒性を示唆するTnT増加に至らない個体が存在する一方で、心臓の傷害性変化又は血清TnTの顕著な増加が認められた個体ではいずれも重度の体温低下又は血圧低下を伴っていた。CRS誘発性心毒性は全身循環悪化に伴う虚血性変化が主因であると考えられた。

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