日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-021E
会議情報

優秀研究発表賞 応募演題 口演 1
相同組換えによるDNA鎖間架橋修復機構の解明
*藤田 侑里香伊藤 将篠原 彰
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

生物は日常的なDNA損傷からの防御として多くの修復経路を備え、相同組換え(Homologous Recombination; HR)修復はその正確さから主要経路の一つである。HR関連遺伝子の欠損は発がんや遺伝病と密接な関わりがあり、HR修復機構の詳細な解明が望まれる。アセトアルデヒドはアルコール摂取後に生体内で生じるDNA 鎖間架橋(interstrand crosslink; ICL)誘発物質で、DNA損傷や発がんを引き起こす。ICLの正確な修復には主にファンコニ貧血(Fanconi Anemia; FA)経路とHR修復経路が必要であり、近年FA経路の寄与はマウス個体を用いた検討で知見が深まる一方、HR経路の寄与はHR因子の変異体マウスの多くが致死のため解析が難しく未解明の点が多い。SWSAP1はHRの促進因子であり、所属研究室の検討で例外的に変異体マウスが生育可能であることが明らかになった。そこでSwsap1Aldh2(アルデヒド脱水素酵素 2)のダブルノックアウト (KO) マウスを新規に作製し、エタノール投与後のアセトアルデヒドが誘発するICLと、修復過程おけるHRの寄与について検証した。ダブルKO mouse embryonic fibroblasts(MEFs)にエタノールを暴露した結果、濃度依存的に小核形成頻度が上昇したことから、FA経路が正常であってもHRに異常があるとICL修復の過程でゲノムが不安定化することが示唆された。さらに若齢マウスにエタノールを投与し全身影響を検証した結果、ダブルKOマウスでは生育に大きな影響はなかったが、骨髄における造血細胞の減少等の異常が確認され、マウス個体でもSWSAP1を介したHRはICLの正確な修復に必要であることがわかった。本研究により、ICL修復に対してHRが担う、染色体安定化機構を新規に明らかにできると考えている。

著者関連情報
© 2023 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top