日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-024E
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優秀研究発表賞 応募演題 口演 1
マクロファージ受容体Tim4によるポリスチレンマイクロプラスチック粒子 の認識能および炎症応答機構
*黒岩 美希山口 慎一朗加藤 慶宜堀 亜里沙豊浦 早織森本 展行中山 勝文
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抄録

ポリスチレン(PS)はプラスチック容器の主な材料の一つであり、その環境中廃棄物はやがて劣化して微細化する。このようなマイクロプラスチックが生体内に入るとマクロファージに良く取り込まれるが、その分子機構は十分理解されていない。本研究では、最近私たちが明らかにしたCarbon nanotubes(CNTs)の認識受容体として機能するT cell immunoglobulin mucin 4(Tim4)(Omori et al., Cell Rep., 2021)が、PSマイクロ粒子も同様に認識するか否かについて検討した。 Tim4は細胞外領域の芳香族アミノ酸クラスターを介してCNTsと同様にPS粒子も認識した。さらにTim4遺伝子欠損マウス腹腔マクロファージはその野生型マクロファージに比べてこれら粒子の貪食能が有意に低いことが判明した。ただしCNTsを貪食したマクロファージからは炎症性サイトカインのInterleukin(IL)-1β が顕著に分泌されたが、PS粒子を貪食した場合はそれが認められなかった。Tim4はホスファチジルセリン(PtdSer)受容体でありアポトーシス細胞の貪食に関わるが、これはPS粒子により有意に低下することが明らかとなった。以上の結果は、マクロファージはTim4を介してCNTsやPS粒子を貪食するが、Tim4シグナルが直接的に炎症を惹起する訳ではないことを示唆する。またPS粒子はCNTsより安全な材料といえるが、慢性的な大量曝露はアポトーシス細胞貪食の抑制による自己免疫疾患につながる可能性が考えられる(Kuroiwa, M. et al., Sci. Total. Environ., 2023 published online)。

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© 2023 日本毒性学会
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