日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-025E
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優秀研究発表賞 応募演題 口演 1
HLA-B*57:01導入マウスを用いた,アバカビルの再投与による過敏症症状の再現
*風岡 顯良青木 重樹伊藤 晃成
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抄録

 アバカビル過敏症は,HLA-B*57:01保有者で生じ,斑状丘疹状の皮疹を主徴とし,発熱,全身倦怠感,その他,種々の臓器障害などの症状を伴う。そして,アバカビル過敏症既往者への再投与は,より重篤な症状を誘発するため,禁忌とされている。しかしながら,その症状の実態については,不明な点が多い。

 筆者らは HLA-B*57:01導入マウスにPD-1欠損とCD4陽性T細胞の除去の条件を加え,5日間アバカビルを20 mg/body /day経口投与することで,皮疹,発熱,真皮および皮下組織へのリンパ球の浸潤や,肝臓おけるリンパ球の浸潤を認めている(風岡顯良ら,第5回 医薬品毒性機序研究会)。そこで,このHLA導入マウスにおいても再投与により顕著な症状の再発が生じるか,検討を行った。上述の条件で皮疹・発熱を生じたマウスに対して,15~18週間休薬したのち,20 mg/bodyアバカビルを投与し,24時間後に解剖した。アバカビル再投与群では,皮疹が確認され,皮膚および肝臓において,リンパ球(一部はCD8陽性)の浸潤ないし集簇が認められた。皮膚でのリンパ球の浸潤は再投与によって,より顕著に認められる傾向にあった。肝臓においては,5日間連続投与後,浸潤したリンパ球が小葉辺縁性に集簇する傾向にあったのに対し,再投与した場合には,類洞に多くリンパ球の集簇を観察し,さらに肝障害マーカーである血清ALTレベルの上昇も認めた。

 以上のように,アバカビルの連日投与を行ったHLA-B*57:01導入マウスに比べ,休薬後にアバカビルを再投与したマウスでは,リンパ球の皮膚への浸潤や血中ALT上昇がより顕著に認められた。本結果から,アバカビル過敏症既往者における再投与による症状再発の機序理解に,HLA-B*57:01導入マウスが有用となる可能性がある。

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