日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-031E
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優秀研究発表賞 応募演題 口演 2
アデニン代謝物による血管内皮細胞のヘパラン硫酸プロテオグリカンの転写調節
*池内 璃仁中野 毅原 崇人北畠 和己山本 千夏月本 光俊藤江 智也鍜冶 利幸
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抄録

【目的】血管内腔を単層で覆う血管内皮細胞は,多様な血管機能を調節しており,これら機能調節にはヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPGs)が関与する。動脈硬化病変初期ではヘパラン硫酸の減少が認められているが,詳細な機構は不明である。アデニン代謝物(ATP,ADP,アデノシン)は炎症などの刺激により放出され,プリン受容体を介して細胞の機能を調節している。本研究では,内皮細胞におけるアデニン代謝物によるHSPGs発現の調節とその機構の解明を目的とした。【方法】ウシ大動脈内皮細胞をアデニン代謝物で処理し,HSPGs(パールカン,シンデカン-1,シンデカン-4)mRNA発現をreal-time RT-PCRで解析した。siRNAはリポフェクション法に基づき導入した。【結果および考察】内皮細胞のパールカン mRNA発現はATPの処理により減少したが,ADPおよびアデノシンではこのような抑制作用は認められなかった。シンデカン-1 mRNA発現は,ATP,ADPおよびアデノシンの処理により減少した。シンデカン-4 mRNA発現は,ATP処理により増加したが,その後減少に転じる二相性の変化を示した。このような二相性の変化は,ADPやアデノシン処理でも見られたが,ATPの作用が最も大きかった。内皮細胞に発現しているプリン受容体A2BR,P2X4R,P2X7R,P2Y1R,P2Y2Rのうち,ATPによるパールカンの転写抑制には,P2X4RおよびP2Y2Rが関与していた。ATPとADPによるシンデカン-1の転写抑制にはP2X4RおよびP2Y1Rが関与していた。一方,ATPおよびADPによるシンデカン-4の早期の転写誘導にはA2BRおよびP2X4Rが,その後の抑制にはP2Y2Rが関与した。内皮細胞のHSPGs発現はアデニン代謝物により調節されること,およびその発現調節はプリン受容体を介することが示唆された。

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