日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-032E
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優秀研究発表賞 応募演題 口演 2
ヒト初代肝細胞を用いたマルチオミクス解析によるin vitro肝毒性評価法の開発
*池田 和輝高橋 政友秦 康祐中谷 航太油屋 駿介富安 範行松本 雅紀馬場 健史和泉 自泰
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抄録

薬物誘発性肝障害 (DILI) は,医薬品開発中止の主要な原因である.DILI評価にメタボロミクス・プロテオミクスによるマルチオミクス解析を応用することで,更なる毒性メカニズムの解明が期待される.しかし,DILI評価に適するヒト初代肝細胞 (PHH) はコストが高く,同一ロットの入手数も限られるため,マルチオミクス研究への応用が進んでいない.そこで本研究では,従来の1/100相当の細胞数からなる5 × 104 cellsからマルチオミクス解析ができる96-well plateを用いた試料調製法を構築したので報告する. 本研究では,同一のPHHs試料から薬物代謝物,メタボローム,プロテオームの情報が取得できるように,前処理工程で効率的な分画を行うことで,マルチオミクス解析を可能にした.さらに,前処理からLC/MSへの試料導入までを96-well plate上で完結させることで,試料損失量を最小限に抑えることができ,従来の1 × 106 ~1 × 107 cellsを用いたバルク分析と比べて検出感度と堅牢性を維持しつつ,前処理操作のスループット向上を達成した.続いて,開発した分析系を用いて10%の阻害濃度でのアセトアミノフェン (APAP) を暴露したPHHsのマルチオミクス解析を行ったところ,APAP暴露群のみでAPAPやその関連代謝物を検出し,同時にCYPや抱合反応に関わる酵素の一部も有意な増加が確認された.加えて,マルチオミクス情報をパスウェイ解析に供したところ,GSHの枯渇やグルクロン酸抱合関連代謝物量の低下などin vivoで観察されている内生代謝の変化をin vitro系でも同様に捉えることに成功した.今後,本手法を用いて様々な薬物での評価を進めていくことで,詳細な毒性メカニズムの解明につながることが期待される.

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