日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-036E
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優秀研究発表賞 応募演題 口演 2
細胞自己凝集化技術を用いた血管内皮被覆化ファイバー状組織体の作製:血管毒性試験モデルへの応用可能性
*橋本 真悟杉山 晶彦木股 敬裕岩井 良輔
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抄録

【背景と目的】細胞外マトリクスを含むハイドロゲル内にて血管内皮細胞が形成する毛細血管構造体を血管毒性試験モデルとして用いる場合には、試験薬のゲル吸着による評価への影響を考慮する必要がある。また、毛細血管構造のランダムな形成・消失という動的変化が生じるため、経時的な構造変化の評価には向かない。我々が開発した細胞の自己凝集化技術(CAT)においては、ゲルを用いずに任意の形状の細胞組織体を自己形成させ培養皿底面に定点固定することが可能である。本研究では、CATを用いて培養皿底面に定点固定された血管様ファイバー状組織体を作製することを目的とした。

【実験方法】ダンベル形状(長辺幅16 mm)に切り抜いたシリコーン板を培養皿底面に貼付して作製した溝空間を培養部屋とし、その長辺両端から2 mm内側の短辺中央部に直径2 mmの円盤状のシリコーン板を細胞凝集塊の位置固定のための支持材として貼付した。CAT用のポリマー水溶液を培養部屋の底面に塗布した後、ヒト臍帯静脈内皮細胞とヒト間葉系幹細胞の混合懸濁液を播種し培養した。

【結果と考察】培養部屋底面に細胞が接着して形成した細胞単層の自発的な剥離と凝集化が培養部屋の辺縁から中心に向かって生じた。細胞単層の凝集化は支持材によって塞ぎ止められ、2点の支持材の間に約0.3 mm径のファイバー状の細胞凝集塊が播種1日後に形成した。ファイバーは少なくとも2週間は断裂することなく維持され、内部にはファイバーと等方向に配向した複数本の毛細血管様構造が、外表面には隙間のない内皮細胞単層が形成した特異な組織構造が観察された。そこで、培養液に塩化カドミウムを添加すると、組織体はファイバー形状を維持したまま外表面の内皮層のみが崩壊するという毒性反応を示した。ゲル吸着の影響を受けず、経時的な評価が可能な血管毒性試験モデルになり得ると考え組織体の詳細な解析を進めている。

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